モンゴル音楽の現在系?

第1回:世界音楽とワールドミュージック:デリヒ(Delehei )を聞いて
こびん 2026.04.26
誰でも

ごあいさつ

 私、こびん(小日向英俊 こびなたひでとし)は、東京音楽大学で「世界のさまざまな音楽」についての講義などを担当しています。学術的には、「民族音楽学」、「音楽民族学」、「音楽人類学」、「世界音楽研究」などと言われる領域の研究者ということになっています。さらに細かな専門領域として、私は南アジア(主にインド)の音楽文化を研究してきました。その一貫としてシタール(スィタールSitār)という楽器を演奏もしています。

 このニューズレター『こびん’s World Musicワールド』は、概ね2週間に1回のペースで、こうした領域の、またはその周辺にあるさまざまな音楽について、ニュース的内容、音楽評論・記事、単なるよもやま話など発信していきたいと思います。

 姉妹メディアとして、Podcast「こびん’s world musicキャスト」を、配信しています。Apple Podcast、Spotifyなどでご視聴いただけますので、タイトルで検索していただければ幸いです。

今回第1回目の配信記事では、まず、基礎的用語について書いておきたいと思います。

「世界音楽音楽」と「ワールドミュージック」

 みなさんは、「世界音楽」という言葉に触れたことはあるでしょうか?なかなか、触れることがない言葉だと思います。では、「ワールドミュージック」ほどうでしょう。こちらは、SNSを含めて各種メディアなどでも少しは出会うかもしれませんね。

 もう気がついた方もいるかと思いますが、実はこの二つの言葉の元は、一つの英語フレーズです。つまり、World musicなのです。びっくりですね。でも、英語においても、フレーズは同じですが意味するところは異なっていました。

 「World music=世界音楽」は主に学術研究(Ethnomusicology)系で、「World music=ワールドミュージック」は音楽制作・商業音楽系で使われてきた歴史があります(注1)。このニューズレターでは、いずれの意味も含むという意味を込めて、英語表記World musicを入れているという訳です。

デリヒ(Delehei )を聞いて

 Delehei(デリヒ)氏は、モンゴル文化に育った、内モンゴル自治区出身のミュージシャンです。以前に、ブロードキャスターであるピーター・バラカンがプロデュースする「LIVE MAGIC 2015」(東京・恵比寿)への出演でも来日したことがあるとのことです。その折は逸していましたが、今回、彼の音楽を聴く機会がありました(注2)。今回のお話では、2018年以来8年ぶりの来日ということでした。

 モンゴル伝統音楽のさまざまな楽器とループ・ステーションを駆使して独自の「1人バンド」でプレイするスタイルでした。4年間、日本で音響も学んでいたこともあり、こうした機材を駆使することになったのだと思います。以前にはロックバンドも組んでいたとも話しているので、モンゴル伝統音楽+西洋ポップスのスタイルから、現在の形に進んだのだと思います。

東京音楽大学付属民族音楽研究所

東京音楽大学付属民族音楽研究所

 使用楽器は、馬頭琴(弓奏楽器)、シュダルガ(3弦の撥弦楽器)、モドンチョール(縦吹きエアリードフルート)などである。特に興味を抱いたのは、モドンチョールです。配布資料によると、この楽器はモンゴルの声部地域に分布し、主にアルタイ・ウリャンカイ族により伝承されていると言う。構造に特徴があります。つまり、両端が開いた開管に指孔は3孔のみの単純な構造です。実際、今回演奏された楽器自体は、演者自身がアルミニウム管から自作したものでした。演奏法は、吹き口を上の歯に当てて空気をエッジに当てる方式で、これは西アジアのナイ(アラブ音楽)、ネイ(イラン音楽)の同系統のフルートと類似しています。現在まで、モンゴル音楽の楽器としてはあまり外の世界に紹介は少なかったと思われ、今回の実演はたいへん興味深いものでした。

*2週間に1度程度の配信を予定しています。本ニュースレターシリーズをご登録いただければ幸いです。

  • 「世界音楽」の考え方については、やや古くなりましたが、拙稿「「世界音楽」—日本における受容とその意味 (World music - Its Reception in Japan and its Meaning)」(2015年)https://tcm-minken.jp/publication/IE_B04201402.pdfがあります。ワールドミュージックについては、「越境」という概念から生まれた音楽として、NHKの《Peter Barakan presents 未来へのプレイリスト~越境する音楽 with 大友良英~》(NHE Eテレ2026年4月17日(金))https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-Y6KWMPWPV4 でも、実際の音楽がプレイリストとして紹介されていました。

  • 東京音楽大学付属民族音楽研究所主催 民研フォーラムNo.9「モンゴル伝統音楽とその変容― ホーミーと伝統楽器の新たな表現体系 ―」(2026-04-23)(https://tcm-minken.jp/forum/20260423.html

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