フェスの季節ですね? 今さらですが…
今年も、フェスの季節ですね。音楽のために多くの人々が集まる「音楽祭=フェス」。推しのミュージシャンが登場するフェスに行く人、多いですよね。当然、「フェス」は(フェスティバル=祝祭、祭礼)が元々の意味なので、宗教と関係していたんですね。ただ現在は、定期的な催し物とか、…祭と銘打った催事の意味で理解されていると思います。
今日は、日本や世界での音楽と「フェス」の関係を、改めて歴史的にも振り返りたいと思います。
日本で最初のフェスはいつ?
さて、日本でフェスと言えるような規模で開催された音楽イベントは、いつ頃から始まったのでしょう。ここでは、オーディエンスの規模を一般的的な音楽堂(ホールや劇場)の約2,000人を超えた、5,000人規模辺りの催事として考えてみましょう。
やはりこの規模で人が集まるのは、屋内でなく屋外だったと思います。「多数の市民」が集まれる会場としては、東京の日比谷公園の野外音楽堂(小音楽堂[1905年])がありました。軍人が演奏していた西洋音楽が市民に開放されたとところだと言われます。さらに大きな大音楽堂(現在の日比谷野音[1923年])は、戦後のアメリカ占領軍による接収を経て、1954年に開放されて現在に至ります(注1)。
ロック歌手内田裕也が主催した10円コンサート第2回(1969年10月30日開催)には、5,000人の聴衆がいたらしい(注2)。会場は野外でもタイトル自体は「コンサート」でした。小松原庸子スペイン舞踊団が1971年から続けた「真夏の夜のフラメンコ」の53回目が、2024年にここで開催されました(注3)。団長小松原庸子(93歳)は、「スペインならではの野外フェスの雰囲気を日本でも」と始めたそうです。まさに、日本での野外フェスの走りの1つでしょう。
一方、日本武道館は大規模屋内音楽イベントの聖地となりました。もちろん日比谷公会堂(1929年)も大規模会場でしたが、席数は2074でした(注4)。武道館では、イギリスのロックグループのザ・ビートルズが、すでに1966年6月30日から7月1にかけて計5回の公演を行いました、その初回コンサートで8,800人を動員したとの記録もあります(注5、6)。シングルステージではなく2日間に亘る公演で「フェスっぽい」ともいえますが、出演ミュージシャンは前座の日本人を除けば、海外組1組みですね。しかしその後のJ-POPへの流れの中でも、これは記念すべきものでした。以下の動画でも、厳重な警備の下で多くの観客が押しかけた様子がわかります(注7)。
ビートルズ来日時の記録映像公開
1969年に始まり1971年まで3回開催された全日本フォークジャンボリー(岐阜県中津川市)は、当時のフォークソングブームを象徴する野外大規模イベントでした(注8)。
【懐かし映像】伝説の野外フェス「全日本フォークジャンボリー」岐阜県中津川市【1970年8月8日】
1964年にアジアで初めて開催された東京オリンピックや、それに合わせて開業された東海道新幹線など、終戦・戦後を経て高度経済成長に進み、世界に「復帰」した日本の中で、フォークやロック、そしてスペインの音楽など、日本の音楽文化も世界と繋がっていったのでした。
1960年代は、現在のフジロックなどにつながるフェス文化の原点と言える時代でしょう。またポップスだけでなく、東北6県の有名な祭りを集めて定期的に開催する東北絆まつりは東日本大震災で疲弊した東北の伝統芸能の担い手を支えること、災害で亡くなった方への追悼、地域経済の活性化という、文化と経済の両面を結びつけたものと言えるでしょう。2025年までの様子は、この東北絆まつりアーカイブでみることができます。
注1 国立国会図書館 国際子ども図書館. 2024. 本で調べる東京名所永田町・霞が関編 - 日比谷公園. https://www.kodomo.go.jp/guide/ya/tokyo/nagatacho/spots_hibiyapark.html
2029年ころの再開を目指して、2025年10月より閉鎖となっています。その替わり、2026年は「日比谷音楽祭2026」として、日比谷公園と周辺会場でのイベントが予定されています(5/30土-5/31日)。新しい学校のリーダーズ、小野リサを始め、ロック、日本伝統音楽、実行委員長の亀田誠治率いるスペシャルバンドなどが出演します。
昭和館. 2026. 資料紹介 日比谷野音100周年. 昭和館ブログ. https://www.showakan.go.jp/blog/tosho20231009-01/
注2 Rock'n Rollienne. 2025. 日比谷野音90周年記念事業 1969-Rock'n Hibiya REVIVAL 10 YEN concert. 内田裕也オフィシャルサイト. https://www.uchidayuya.com/special/10yen/index.html
注3 吉田純子. 93歳、今年も真夏のフラメンコ 小松原庸子スペイン舞踊団、53回目は和太鼓と共演. 朝日新聞(2024-7-25). https://www.asahi.com/articles/DA3S15993721.html
注4 日比谷公会堂. n.d.. 展示について 日比谷公会堂の歴史~アーカイブから文化をたどる~. 日比谷公会堂. https://hibiya-kokaido.jp/docs/r7-1.pdf
注5 毎日新聞社. n.d.. ザ・ビートルズが来日 第1回目公演。観客でいっぱいになった日本武道館の1階席、2階席(1966年6月30日). Mainichi Photo Bank. https://photobank.mainichi.co.jp/kiji_detail.php?id=P20100225dd1dd1phj702000
注6 小倉智昭. 2016. 小倉智昭のザ・ビートルズとっておき(2) ビートルズ来日公演 今ではあり得ない逸話の数々. NIKKEI STYLE. 日本経済新聞(2016-9-27). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO07425310Q6A920C1000000/
注7 警視庁. 1966. ビートルズ来日時の記録映像公開 ノーカット版. 毎日新聞.(リンクは13:22より)
注8 メーテレニュース. 2024. 【懐かし映像】伝説の野外フェス「全日本フォークジャンボリー」岐阜県中津川市【1970年8月8日】.
古代のフェスって?
では世界を視野に入れるとどうでしょう。古代ギリシャで建築されたペリクレスのオデオン(ペリクレスの音楽堂、紀元前446〜442)は、様々な舞台芸術向けに建てられた最古の屋根付き音楽堂と考えられています(注9)。収容人数は不明ですが一説によると約6,000人がパフォーマンスを楽しめたようです。古代ギリシャですから、そこで繰り広げられたのは、合唱コンテスト、音楽コンテスト、音楽劇、詩の朗読などだったといわれています。こうした舞台も、パンアテナイア祭というアテネ市民にとり重要な宗教的行事の一環でした。ちょうど昨日、キプロスの作曲家の友人からメールが送られてきましたが、彼の作品にもこうした古代ギリシャ世界の音楽劇を彷彿させるものが含まれていました。
20世紀は野外フェスの時代
さて、20世紀の野外ではどんなことが起こったのでしょう。オーディエンスの数を増やそうとすれば、音を遠くに届けるためにも音響装置が不可欠になります。そうした装置を導入して多くの観客を想定した音楽フェスの起源とも言えるのが、ウッドストック・フェスティバル(1969年、アメリカ・ニューヨーク州ベセル)でした。3日間の日程での予想観客数を計20万人と見積もったこのフェスは、2倍にもなる40万人が訪れました(注10)。1967年に開催されたモントレー・ポップ・フェスティバル(注11)と並んで、大規模フェスの先駆けとされています。ジミ・ヘンドリックス、ザ・フー、サンタナ、ジョーン・バエズ、そしてインドからは、インド音楽大使と言われたラヴィ・シャンカル(シタール奏者)が出演しています。
カウンター・カルチャーが大きく盛り上がっていた当時、インドの精神文化に対する興味(プル要素)と、インド人たちのナショナリズムの中で芸術音楽を世界に広めようとする意欲(プッシュ要素)がマッチした結果だと思います。ヒッピーたちのインド文化理解には、少なからずの「誤解」があったにも関わらず、こうしてフェスの文化の中で「ワールドミュージック」の胎動も始まりました。またここでは触れませんが、音響装置(PA)の発達もこうしたフェス文化の拡がりと不可分だったことは言うまでもありません。当時の様子を、是非動画でご確認ください(注12)。
注9 THEATRON consortium. 2020. Visual Resources - The Odeon of Pericles. Didaskalia. https://www.didaskalia.net/studyarea/visual_resources/pericles3d.html
注10 Pettersen, Michael. 2019. Blog - The History of the Sound at Woodstock. INSIGHTS. https://www.shure.com/en-US/insights/the-history-of-the-sound-at-woodstock
注11 Monterey International Pop Festival. 2017. Monterey International Pop Festival. https://www.montereyinternationalpopfest.com
注12 Wadleigh, Michael. 1970. Woodstock Official Trailer. Three Days of Woodstock: Love and Peace and Music. https://www.imdb.com/title/tt0066580/?ref_=ext_shr_lnk
■最後までお読みいただき、ありがとうございます。少し面倒ですが、リンクが付いた本文や注からは、動画をご覧になれます。なお、サムネイル写真は日比谷野音by Nesnadの一部を利用させていただきました。
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